アメリカ大統領のドナルド・トランプ氏
ユーラシアグループ
「イアン・ブレマー」の解説。5月12日

2025年5月22日

【ウクライナに得たアメリカの権益】
 トランプ米大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領に重要鉱物協定書に署名させ、協定はウクライナ議会でも批准された。これにより、アメリカは、ウクライナに対するさらなる防衛支援と引き換えに、新たな投資手段を確保した。トランプ氏には大きな成果だ。一方、トランプ氏のロシアに対する取り組みはうまくいっていない。トランプ政権の幹部達は、不本意ながら、プーチン露大統領が取引するつもりがないことを受け入れるようになってきている。

【ロシアは停戦しない】
 ロシアはアメリカ側へ交渉条件についてうそをついた。プーチン大統領はウィットコフ特使に対し、ロシアはトルコと国連との合意では、黒海での安全な航行にロシアによる船舶検査が含まれると直接伝えた(実際には含まれていない)。また、ロシアの農業関連企業に対する輸出合意は制裁から免除するものだと述べた(実際には免除されていない)。ウィットコフ氏は、相手側の担当者への確認を怠り、ロシアの主張を事実として受け入れて交渉に臨んだ。しかしアメリカの「合意案」(ウクライナのNATOへの加盟を否定し、クリミア承認を含むもの)が破綻すると、ウィットコフ氏はロシアが事実を歪曲していたことを知った。トランプ氏は、広範な取引を成立させてロシアを「孤立から引きずり出す」ことで、クレムリンのパートナー達とのビジネスチャンスを築こうと熱心に取り組んでいる。トランプ政権幹部達は、不動産開発から北極圏の共同探査、ガスパイプライン「ノルドストリーム」の再稼働まで、あらゆる商業計画を盛り上げた。しかしウクライナでの停戦がなければ、全ては消えうせるが、プーチン氏は、その提案をするつもりはない。

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